SDGsの本質を掘り下げる③ ~周りとの共創を考える~

はじめに

SDGs(持続可能な開発目標)は、気候変動や貧困、不平等といった複雑な問題を解決するための国際的な目標です。しかし、これらの目標を達成するためには、私たち一人ひとりの努力だけでなく、周囲との「共創(コクリエーション)」が不可欠です。特に、SDGsの17番目の目標に掲げられている「パートナーシップで目標を達成しよう」は、すべての目標をつなぐ要となる考え方です。

この記事では、SDGsの本質を理解する上で重要な「パートナーシップ」の視点から、共創の意義と実践方法を探っていきます。周囲との連携を深めることで、SDGs達成への道筋が見えてきます。サステナビリティ・リテラシーで不可欠な「多様な価値観を理解し、共に生きる」ためには、このパートナーシップ思考が重要といえます。

分断が起きやすい社会構造

グローバリズムと分断

現代の社会は、グローバリズムの進展により、国境を越えた情報や技術の共有が進んでいます。しかしその一方で、経済格差や政治的な対立が生まれ、社会の「分断」も深刻化しています。パンデミックや気候変動の影響が国や地域によって異なるように、世界は一体でありながらも、さまざまな背景を持つ個別の問題に直面しています。

若者が感じる現代の孤独感

身近な問題としては、核家族化や雇用形態の多様化により、孤独を感じる若者が増加していると言われています。内閣府の「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、特に、20代から30代の一人暮らしでは、主な居場所である職場やオンライン空間に「相談できる人」がいる割合が半分以下という現状があります。この孤独感の原因の一つは、所属できる適切なコミュニティの不足です。

このような時代において、従来の「自分だけ良ければいい」という考え方ではなく、社会全体を見渡した「共創」の視点が必要です。SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、まさにこの共創の重要性を示しています。

社会起点思考としてのパートナーシップ

パートナーシップとは、異なるバックグラウンドやスキルを持つ個人や組織が協力し合うことです。SDGs達成のためには、政府、企業、市民団体、地域コミュニティなど、さまざまなセクターが連携することが求められます。この「社会起点の思考」は、アウトサイドインの延長線上にあり、社会全体の課題解決に向けた包括的なアプローチとなります。

パートナーシップの3つのメリット

スケールメリット

一人で解決するには難しい問題も、複数の組織や個人が協力することでスケールアップし、効果的な解決策が見つかります。

多様な視点の融合

異なる業界や専門分野の知識を組み合わせることで、新たなアイデアや創造的な解決策が生まれます。

リスクの分散

複数のパートナーが協力することで、リスクが分散され、持続可能なプロジェクトの推進が可能になります。

パートナーシップの具体例

例1:環境保護と企業連携

あるグローバル企業が、NGOと連携して森林保護プロジェクトを立ち上げました。企業は資金提供と技術支援を行い、NGOは現地コミュニティとの調整や植樹活動を担当しました。このようなパートナーシップにより、現地の雇用も創出され、目標13(気候変動に具体的な対策を)と目標15(陸の豊かさも守ろう)の達成に貢献しています。

例2:教育と地域社会の協力

ある地方自治体は、地域の学校や企業と連携し、SDGsに基づいた教育プログラムを開始しました。生徒たちは、地域が抱える課題(例:高齢化や環境問題)について学び、解決策を提案する活動を行っています。この取り組みは、目標4(質の高い教育をみんなに)や目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に寄与しています。

例3:テクノロジーと医療の連携

テクノロジー企業が医療機関と協力して、遠隔医療システムを導入するプロジェクトが進行中です。これは、特に医療アクセスが限られる地域での医療サービス向上に寄与しており、目標3(すべての人に健康と福祉を)の達成に貢献しています。

パートナーシップを実生活に活かす

1. 誰と協力できるか?

友人や同僚、家族と共に、地域イベントやボランティア活動に参加することから始めてみましょう。例えば、友人グループで地域清掃活動を行えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)に貢献できます。

2. 何をシェアできるか?

不要になった衣類や家具をリサイクルショップに寄付したり、シェアリングエコノミーを活用することで、目標12(つくる責任、つかう責任)の達成につながります。

3. どんな知識やスキルを提供できるか?

自分の得意分野で他者をサポートすることもパートナーシップの一環です。例えば、ITスキルを活かして地域の高齢者にデジタルリテラシーを教える活動は、社会全体のデジタル格差解消に貢献します。

パートナーシップで効果を発揮するレバレッジ効果

パートナーシップは、単なる協力以上に大きな「レバレッジ効果」をもたらします。レバレッジ効果とは、少ないリソースでも相乗効果を発揮し、より大きな成果を生むことです。たとえば、異なる分野のパートナー同士が連携することで、新たな市場や技術が開拓され、持続可能なソリューションが生まれます。

また、パートナーシップは、先述の孤独感を和らげる鍵でもあります。活動を通じてつながりを構築し、社会課題の解決に向けた協力関係を築くことで、孤独感を抱える人々の感情に寄り添い、連帯感を高めることが可能です。このように、パートナーシップは個人や組織が抱える課題を共有し、新たな価値を創造するための強力な手段にもなりえます。

まとめ:周りとの共創を考える視点の重要性

SDGsの達成には、私たち一人ひとりの努力だけでなく、周りとの共創が不可欠です。パートナーシップを意識した行動は、個人の成長にもつながり、社会全体の持続可能性を高める力となります。

次回の記事からは、ビジネスパーソンとして特に必要不可欠なサステナビリティの知識や考え方を解説していきます。

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